あかん、文が頭に入らへん。



うなるような声が聴こえてきたので手に持っていたシャーペンで額を小突いてやった。 痛い痛いなんて大げさすぎやろ 心にも思ってないこと言ってる暇あったら手を進めなさい。 先生気分でそう言う私の目線の先には額を押さえた幼馴染・・・ではなくて数字と記号でできた問題の群れ。 なんだかワークのちょい向こう側から軽い罵声が聴こえなくもないがスルーすることにする。 夏も終わりとか言われてますけれど私の夏の終わりはまだまだ先といいますか 夏休みの宿題の終わりがまだまだ先といいますか・・・ガクッっと聴こえてきそうな勢いで折ってみた私の頭は そのまま右手に握ったシャーペンに激突したらしい・・・じ、地味に痛い・・・


「俺のデコ小突いたからバチが当たったんや」
「んなアホな」
「アホはそっちやろ。さっきから全然右手が仕事してないやないか」
「それは謙也の目の錯覚やと思いますってか自分かて進んでないやろ」
「それはの目の錯覚やと思います」
「そう言うと思ったわ」



こんなのすぐ終わるとか思っていた夏休みの宿題は一向に手をつけられないまま8月も残り数日。 毎年恒例となっている謙也との宿題処理会in図書館も今年は絶対出席するもんかと思ってたのに・・・ お互い得意教科と苦手教科が綺麗に反対なだけに結構この処理会は助かってる事実も事実だけれども、 それでももうそろそろちゃんとしないとな、うん、(あれ、謙也の手が視界に)


「ここ、"4"やろ」
「・・・え」
「自分で"−"って書いたんちゃうんか」
「あー本当だ足してるわ、さすが数学脳謙也くん」
「引き算は数学やなくて算数やけどな」


集中力が切れてきたみたいなんて言ったら最初から集中してないやろって言われるだろうな。 7月の私に告ぐ、今すぐ宿題に取り掛かりなさい、あなたせいで私は今こんな感じです。 なんで毎回こうなるってこと分かっときながらしないのかなーバカ私のバカ。 夏も終わるからだろうか前まで耳を塞ぎたくなるくらいうるさかった蝉も今はもう黙っている。 どうせなら騒いでくれていいのに、そしたら集中できない理由になるのに、 (あーぜんぜん駄目)(集中力来い本当に・・・相変わらず、字汚いなぁコイツ)


「・・・あかん、俺集中力切れてきた、」
「・・・最初から集中してないやろ」
「・・・言う思たわ」
「悩んでらっしゃる問題、第二段落に答えありますよ謙也さん」
「え、まじですか・・・さすが文系脳さん」
「・・・なあ、来年はお互いここに来ないようにしよ、計画ちゃんとたててさ、」
「・・・俺これでも毎年計画たててるんやで」
「私だって・・・まあ、計画通りに行った例はないけど」


せやろなはそうやろな思とったわなんて笑ってますけど謙也さん 今日という日を過ごしてるの計画が計画とした役目を果たしてくれなかったからとちゃうん? そうえば私の計画表カレンダーは8月になってから行方不明になっている。 7月の初めはちゃんと計画通りにしてたはず、お祭りの日にカレンダーにバツ印を書いたのは覚えているんだから間違いない。 あ、でも28日くらいに終わらす予定だった分をすっぽかしたのも覚えてて、 8月5日の日からは全く宿題に手をつけてないはずだからきっと 「一緒にするなや、俺の計画表は仕事してくれとるで?」 うんちょっと聞き捨てならない言葉聴こえた



「・・・それ冬は暑いねって言ってるもんだよ嘘だってばればれ」
「そんなに言うなら見るか?予定表今持ってるで」
「持ち歩いてるんかい・・・いやでもさ現に目の前で国語のワークを」
「あったあった、これやこれ」
「おー見せて見せてって折りすぎやろ!」


こいつ最初から見せる気だったのかツッこます気だったのかと思いつつ開く私の顔を じーっと見るのはやめていただきたい。(本当折りすぎて、広げにく・・・) やっと広げれた予定表は手書きのへなへなカレンダーで、 終わったらしい課題にはオレンジで打ち消し線が引くことにしてるらしい。 ・・・結構その日に終わらしてるんだとかとかもうちょっと丁寧に書きなよとか 言いたいことはぽんぽん出てくるけど、これは「ちょっと、異議あり」


「ん?なんや?」
「なに、ここ」
「・・・ここって、どこやねん」
「・・・この、今日の、"の日"ってとこ」


「・・・お、お前と違って計画的な夏休みやっちゅーことや」



ああ、そーゆーこと、なんてサラっと言えるほど夏ボケはしてないようだ。


夏休みは計画的に


「・・・もしかして、毎年予定表書いてるん?」
「お、おおおそうやけど」
「来年も?」
「そりゃ、まあ、」
「ふーん・・・来年は一緒に書こうか」
「お、おお・・・」


・・・と二人やと、集中しにくいんやけどな
・・・来年はちゃんと、計画遂行しますよ、最後まで